パカーンコーヒースタンド




旧北国街道沿い(牟礼宿)に面して長く商店を営まれてきた方より場所と記憶を引き継ぎ、コーヒースタンドと町内外の人々が交差する新しい場所をつくるプロジェクト。古いものを使いながら作り替えていく、常に変わり続けるという意味から「途中」という緩いコミュニティを生み出した。メンバーは、編集者・映像作家・カメラマン・地元工務店・地域おこし協力隊・建築家など多種多様な専門性を有しており、各専門性×場所の組合せでまちスケールの最小複合施設になる展開も想定される。

立地は、旧牟礼村と旧三水村の境界線(エッジ)である鳥居川に近い場所。かつて人・モノ・情報が行き交った元宿場町の背景をもつこの場所が、人が集まるためのハブになり暮らしの拠り所になっていってほしい。牟礼地区は町内でも人や車の流量が多く、人口減少する現在もなおインフラの整ったまちの中心といえる。暮らしの範囲を行政単位で線引きせず北信地域全体を捉え、地域経済圏とコミュニティのバランスを研究視点でもっていたい。
元宿場町で元タバコ屋の間口からコーヒーを提供する姿は、建築の役割を転換して人の居場所を生む姿が垣間見れ、まちの未来の縮図のようである。夕方には、左から小学生が帰宅し、右から中学生が帰宅していく。店長がそっと話しかけながら地域の見守りの機能を果たしているシーンにはグッとくる。ガラス張りで中の様子がよく見えることは活動がまちに溢れ出しやすく清々しい。定着するまで多少の時間はかかるが、地域の期待や商業的な要望が多いこの地域で、近い将来「まちなか広場」として欠かせないまちのピースになっていることを願う。今後、町内の空き家リノベーションの動きが活発化し公民連携の兆しが見え、まちにどのような化学変化が連鎖していくのか、研究と実践の両輪で取り組んでいきたい。


2023.06~
計画敷地 :長野県上水内郡飯綱町牟礼2730-1
建築主 :株式会社Huuuu(パカーンコーヒースタンド)
主要用途 :飲食店舗+事務所
建築面積 :169.20㎡
延床面積 :335.09㎡
設計監理 :小松剛之+戸井達弥
施工会社 :株式会社BlackPepper
サイン :KAZUSIGNS(ハンドペイント)+motti_signs(看板取付)
DIY :途中
写真撮影 :小林直博

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